十二月一日(日) 除夜へたどる月初め。ある男がベランダより妻の駐車シーンを眺めていたところ、車は切り返しの不意なはずみでキックボードの少年を引っ掛けてしまった。動転した彼は冷凍庫よりパリパリバーを三本もって現場へ駆けつけたという。なんでみんなで食うの。
十二月二日(月) 人は皆、およそ七年の周期で「おじいちゃんが山を持っている」という者に出会い、夜々という山々を越え、忘れてゆく。
十二月三日(火) しあわせになりたいのならまずは歯ブラシのヘッドを小さめにせよ。
十二月四日(水) 思い返す先月のこと、首都高を走行していると助手席の者が鉄火巻きの醤油をもらい忘れたといった。そのときカーラジオより「醤油を積載したトラックが横転」との事故情報が入る。場所からしてそう遠くはなく、一瞬マジで行くだけ行ってみようかと思いました。
十二月五日(木) ガストの配膳ロボが床に落ちたおじいさんの帽子を最敬礼のごとくに最徐行を以てして踏み倒しては尊き労働の本懐をみせた。
十二月六日(金) レゲエバー、デリック・ハリオット、ルーザー、深刺、貫通、結果、なにもない、夜。
十二月七日(土) 路肩に停めた軽ワゴンに仕出し弁当を積み込む者たちをみた。荷台を最寄りとする男がバスケのピボット的な動きで獅子奮迅の大活躍。それは学生時分に一生使わないモノとして挙げた「因数分解」に次ぐものがあっけなく崩れ去る瞬間であった。
十二月八日(日) 今日も日本のどこかで恋人たちが神社に参り願を掛ける。「何をお願いしたの?」と男。「ん、秘密」と女。そのやりとりが発生する度に俺のメガネのレンズがどんどん分厚くなるのでやめてくんない!?
十二月九日(月) 深夜にトイレ。炊飯器ゆっくりオープン。めちゃくちゃ怖い。それが食いしん坊の幽霊だとしても。それが親の仇のように切れ込んだTバックの幽霊だとしても。
十二月十日(火) こちらが朝な夕なに敬してやまない男塾々長江田島平八の「男なら幸せになろうなどと思うな。幸せになるのは女と子供だけでいい。男は死ねい!」というお言葉をそのまま首回りに彫って欲しいと彫り師の方に相談したところ「それは少し考えた方がいい」とのことであった。その方曰く、過去にもう一名とめた者があるという。それは米国の方であり眉間に「缶」と入れて欲しい、との要望に。
十二月十一日(水) 「恩返しこそ最大の利己である」とでも言いたげに激しくねじれてカッチカチに固まる海パンがベッドの下より発見される。
十二月十二日(木) 「ビールにリアルゴールドを混ぜると美味しいですよ!」などと若人がぬかす。「んな甘ったるいもん漢が飲めっかよ」と振り払いつつ密かにトライ。おいち。
十二月十三日(金) 今年唯一泣いた出来事はひどく貧しい少年時代を過ごした男がもたらした。彼は中1のころ弟のために映画ターミネーター2を友人の話から紙芝居に起こしたという。その現物がまだあるということで表紙の写真を送ってもらったところ「タ〜ミネ〜タ〜2〜」とした筋弛緩剤のようなタイトル表記は弟に対する緊張の暖和が感ぜられこちらの涙腺まで大いに緩ませた。その下には食の細いお坊さんのような人物が真っ黒い棒を持ち、なんと絵にも関わらず目が半開きであった。そして中央に位置なすは人類史上もっとも短い半ズボンの男児が歯茎をすべてむき出しに万歳している。その横では鼻の穴が完全に開き切った大失敗パーマの女性が中腰にてカメラ目線。「これはもう敵のターミネーターは来ないのではないか」という落涙も我ながらに無理もなく。
十二月十四日(土) コーヒーショップにて若いカップルが喧嘩に至らないまでも会話に小競り合っていた。そのうち女が息巻いては「だからこれが渋谷でしょ!?」と小さなテーブルに大きなリュックをのせた。大丈夫か、その道案内。
十二月十五日(日) 冬の平塚海岸は冬の平塚海岸であった。そぞろ歩く波打ち際。「はい、今の波、覚えたから」とつぶやく。それは波にとって不本意なこと。
十二月十六日(月) 若きパンク野郎と意見を交わす。この久しい飽和時代においてもはやドラッグ、刺青、犯罪、自殺では狂気の表現に幅が利かないと意見は一致する。ならばとこの先の展望を語らせたところ「なんすかね、もう早寝遅起きぐらいしか」とコンバースの靴先に視線を落とした。うつくしい。
十二月十七日(火) とあるニュースサイトに「相方の○○さんのお父さんのお葬式の時の」という「の」を湯水のごとくに用いたコメントをみる。一応「漢委奴国王の金印の行方かな!?」というツッコミを入れておきました。ふぅ。
十二月十八日(水) この先の人生はドヤンキーと超ヤンキーの違いを解明するにこの身を捧ぐ、というのもそう悪くはなさそうだ。
十二月十九日(木) 真夜中にリアルゴールドビールをあおり、まっっっったく知らない女の「ご好評につき鞄の中身大公開第二弾!」をYouTubeにて。
十二月二十日(金) 桜新町はとある一見の町中華。注文するものがことごとくに美味い。酒の興ものる会計時に「地球最後の日に食いたいほど美味い!」とおかみさんに伝えたところ、真顔で「地球最後の日は営業しません」とのこと。いやぁなんだかピリッとしたお土産まで持たせていただいて。
十二月二十一日(土) もう「亀田眉間を縦に擦ると止めどなく皮膚がポロポロ剥がれ落ちる太郎」に改名しますね。
十二月二十二日(日) 巷では「心配事の95%は現実には起こらない」と語られる。そのもっともらしい無責任な発言こそが的中の5%じゃオラァ!
十二月二十三日(月) とある商社に宮仕えする男曰く、通うヘアサロンにて美容師の話を適当に受け流し続けた結果「たい焼きを食べたことのない元プロゴルファーの牧師」というもはや引き返せない肩書きとなっている。
十二月二十四日(火) 羽田に向かう車窓より思いを馳せる。もしもわたしが育毛業界に従事する者であればこのようなネット広告を出稿するであろう。まずはスマホの画面上に一本の髪の毛を出現させて「ん?」という意識の移行を図る。それはいくら息を吹きかけても飛び去ることなく、髪をタップした瞬間に弊社サイトへ誘導されるものである。なんのこっちゃ。あ、来年もよろしくお願い致します。
fin