十一月一日 (月) パン屋で働く若い女性店員の腕には無数の火傷痕、いつの日か抱きかかえる小さな息子が不思議そうに触れる。
十一月二日 (火) 小料理屋にて麦のソーダ割り、お通しには油揚げと大根を薄口に煮たもの。とても気が利いているじゃない。うむ、ならばそれに対極するものとはなにか。そら出所祝いを監獄レストラン・ザ・ロックアップで開催することに決まってんべが!
十一月三日 (水) 素人独りキャンプを敢行した男曰く、それはそれは想像を絶する体験であったらしい。まず現地まで四時間超のノンストップ・ドライビング、そして到着するやいなやテントの設営に取り掛かるも三時間半を費やした挙句に諦めると夕飯に予定していたローストビーフなど精魂尽き果て作る気がしない。しょうがなく車を飛ばし遠方のマニアックなコンビニへ向かい、山崎まるごとソーセージとまるごとバナナを頬張り、いささかにまるごとが過ぎると頬を染めつつそのまま駐車場で翌朝まで眠り続けたという。
十一月四日 (木) 友人の弟の同僚が飼う小鳥が体調を崩す。
十一月五日 (金) もう何年も会っていないアメリカ人の友人を想う。別れ際に教えた「根性焼きお願いします」はどこかで使ったのだろうか。
十一月六日 (土) パソコンの裏に忘れ去られた付箋を発見。そこには「野良パンティー」と殴り書き。根性焼きお願いします。
十一月七日 (日) 焼酎から日本酒へ切り替わる折をみて「映画に出てくる極悪犯罪集団はなぜ金を求めるのか」と年上の方に問うた。金など使わずにすべてその暴力で奪えばいいのではないかと。すると年上の方が箸を置いて「じゃあお前はジュース買うのに毎回自販機をこじ開けるのか!」と熱く張り上げた。ありがとうございます、お勉強させて頂きました。
十一月八日 (月) ユーチューブのおすすめに「恋ノチカラ第一話」が現れた。このドラマはすでに二十周は観ている。おれは死と宇宙以外に興味のない男だがこの作品にはなぜか惹かれる。内容も奇を衒うものではないラブストーリーだが気付けば二十一周目の準備運動として首をコリコリ回していた。やっぱね、深っちゃんの健気さと揺れる乙女心よ。春菜ちゃんも良い子でね。だもんでちょいと女女な展開が続くと思いきや児玉清さんが「僕はそのやり方は好きではない」なんつってピリッと締める口直し感なんざもはや梅水晶の類よ。でもね、壮吾と年上彼女のゴタついた件はちょっと要らないかなぁ。テンポが滞る感じかなぁ。いや、待てよ、わざと滞らせてラストに向けて段差をつける作戦だとしたらおれはもうケツの毛をすべて抜いてレターパックでフジテレビに送らなきゃならないよ。んん、結局ぶっ通しで観ちまった朝方にふと思い出すのは数年前に飲み屋で知り合った女だわ。恋ノチカラが好きだってんで嬉々として関連縛りのしりとりをした。こっちが張り切って「フェンネル!」つったら「ルー大柴!」ってよ。ルー大柴出てねぇわ殺すぞ雌豚が!
fin