月別: 2023年7月

底辺×高さ÷波打ち際のチンピラ

 

七月一日(土) お相撲さんが眼鏡を掛けた時に生成される幕下感をどうにかして世界平和に繋げることはできないものか。

七月二日(日) どなたか「自分シャトルバス運がないんですよね」との発言に対する適した返しを教えてください。

七月三日(月) 一人暮らしの女が「最近は物騒だから一応青竹踏みを枕元に置いて寝ている」という。暴漢の足裏から反省と健康を促す気なのか。

七月四日(火) 男女問わずして色気というものは整っただらしなさのことなのです。

七月五日(木) お前な、それサンタクロースが「ツチノコはいません!」と言っているようなもんだぞ!

七月六日(金) 出前で取った醤油ラーメンが甘酸っぱい。我を第一に疑うのがこちらの数少ない取り柄であるが、確認に次ぐ確認の末はやはり甘酸っぱい。店に問い合わせたところ向こうは外国人の店員であろうか「甘酸っぱい」が今ひとつ通じない。最終手段として多少ややこしくなろうとも「初恋」の出番なのかも知れないと。

七月七日(土) ブレーキランプ八回点滅、ハンドルヌルヌルのサイン。

七月八日(日) 喫茶店にて「知りたくないもの」との話題に盛り上がる隣の男たち。「ん〜彼女の男遍歴は知りたくないなぁ」「俺は人間ドックの結果だな」「いやいやそこは同期の給料でしょ」などとぬるいことを延々に言い合っている。母親の性感帯だろうが!

七月九日(月) あぁ、それは良い意味でゴミですね。

七月十日(火) ピーコックにて薄皮つぶあんぱん一つの会計が神話的に遅いおじいさんに遭遇する。これはもうレジ打ちのおばちゃんに売りつけようとしているのではないか。

七月十一日(水) 付き合いの長い男が劣悪な育ちによりカタカナに不自由していると打ち明けてくれた。彼はラーメンをラァメンと綴る。お前それベテランのラーメン通じゃねぇか!

七月十二日(木) 会社員の傍ら独自に遺伝子学を修める方との昼食。「人間は遺伝子の乗り物だという巷の見解には概ねこちらも賛同しています。あ!ほら!ごらんなさい」と指差す先に炎天下のさなか自転車のチェーンを汗だくで直す男がいる。「遺伝子の乗り物が自らの乗り物を直していますよ。これは愉快、滑稽だ!」と大声でいう。なんとアカデミックな喧嘩の売り方だ。

七月十三日(金) 真夜中は丑三つ時、公安の職員がドアを強弱強弱弱とノックを打つ。向かい入れたこちらに「実は落合博満と奥田民生の中身はまったく同じなんです」と耳打ちしたとて特段の驚きはない。

七月十四日(土) 毎日スイカ食ってんなぁ。こらスイカが毎日を食ってんなぁ。

七月十五日(日) 「ロックがもう死んだんなら そりゃロックの勝手だろ」という気持ちで扉を開けてお年寄りを先に通す。

七月十六日(月) とある元高校球児が思い起こすには最後の県大会の準決勝で破れた際、監督が「生まれ変わったらお前たち九人が俺の監督になって欲しい」と言ったらしい。絵に描いたような熱中症じゃないスか。

七月十七日(火) 無限とは有限の中にだけ存在するし。

七月十八日(水) 246を見下ろすオーセンティック・バー。ビル・エバンスのピアノが黄泉より浮世を愁える。歩道に止めた年上の方の自転車を区の職員がトラックに積み込む。こちらが「いいのですか」という視線を送る。年上の方が小さく二回頷く。

七月十九日(木) はい!今!今!秋が忍び込みましたよ!

 

fin