月別: 2024年7月

軋む短夜のヒンジ

 

七月一日(月) あちらに見えますのがこの村で唯一のS字パンティーウォッシャーケースの専門店になります。

七月二日(火) 遡れば大化の改新の結果が現代に生きる我々の姿であり、大政奉還、第二次世界大戦、延いては中日宇野のヘディング事件も我々に寄与して疑いもなく。

七月三日(水) 外国人の彼女より「こんや、めちやくちやにしてあげぬ」という歯切れの悪すぎるLINEを受けた男が十字を切る。

七月四日(木) 「既成概念とは愛で出来ているのだからいくらぶち壊してもそれが既成となり愛からは決して逃れることはできない」とでも言いたげな鴉がオン・ザ・バルコニー。

七月五日(金) 宇宙いわくにクラムチャウダーと留守電はもう同じものだという。失礼しちゃう!

七月六日(土) ぬか床に使用している木桶のタガが割れてきたので様々なものを巻いて補強を試したところクロムハーツのケルティックローラーベルトがジャストフィッツ。

七月七日(日) 織姫は思った。一年ぶりに逢った彦星の眼鏡のレンズが巣鴨の地蔵ばりに皮脂で汚れており「バリア〜」と。

七月八日(月) 大手貿易会社に勤める男が晴れて出世を果たすも「忙しいさなかに部下が増えて個々に出した指示がこちらでわからなくなる」との悩みをこぼした。なるほど、尻でエアコンのリモコンを踏んでしまい「ピッ」と鳴っては指示がこちらでわからなくなるストレスに同じだろう。その意味合いで「あぁ、わかるわぁ」といっておきました。

七月九日(火) 近所の公園にて裸眼のフットサル。草をむしるおばあさんに「へい!パス!」と。

七月十日(水) 身近な男がとあるフリマアプリで『ヨウジヤマモト』を根気よく『ジョージヤマモト』と検索しては「なんか放浪酒・城崎の雨しか出てこねっぞ!」とこぶしを効かせる。

七月十一日(木) 寝ているところを起こされて「今何時?」と聞かれる。

七月十二日(金) 我的に「あぁ、名前は聞いたことあんけど」の代表格はやはりアガサ・クリスティだろう。

七月十三日(土) や、だから繰り返しになってしまうけど大切な奥さんの肛門のシワの数くらい知っておけって話ですよ。

七月十四日(日) 本日パリにて五輪聖火リレーがスタートすればもうこの際はっきりとさせたい。オリジンの海苔弁に付いてる醤油は磯辺揚げでいいのね!?いいんだろ!?

七月十五日(月) インドネシアへ赴いた男の土産話によると現地で知り合った純朴な若者が立派なワニ皮の財布を持っていた。「いい財布だね」と何気なくいったところ「これは父を丸飲みしたワニから作りました。今でもこの財布に父を感じています」との若干に栄養学をかすめる返答があったという。

七月十六日(火) 十年に継続する感動とはある意味で感性の停滞を指す。ことヴィム・ヴェンダースの写真集とミッドタウンは虎屋菓寮の暖簾をみる度におれは悲しいふりをする。

七月十七日(水) それはちんぽこ丸出しでハンドルを握る露出狂のおじさんが首都高の合流でうろたえるような朝焼けであった。

七月十八日(木) ガールズバーにて「まぁ、なにはさて個性とはすべての元凶なのよ」とガールズたちに説いた瞬間、後方よりダーツの「キューン!」というブル音。何か多方面に刺さったようでありがとうございます。

七月十九日(金) 「女子中学生のスポーツブラで首を吊って死にたい」と願う男がインプラント費用の貯金を始めた模様。そう、生きるんだ。

七月二十日(土) 早朝のすき家にて泥酔したキャバ嬢たちの会話が耳に入る。「あんさぁ、プロ野球とJリーグはキックベースで統一した方が絶対よくね?みたいな」という寝起きの独裁者のような暴論にその相方が「そんで火、金だけ分けるみたいな」とゴミの分別的な方向性を大胆に打ち出した。

七月二十一日(日) 先日より我が家の傘立てに「私」と書かれたビニール傘がある。

七月二十二日(月) とある民家の前に「ご自由にお持ちください」との張り紙。そこにはスリッパと飯盒が貰い手を請うており、先着のおばあさんがやおら飯盒をハンドバッグ的に前腕にかけた。今思えばスリッパで思い切り後ろからつっこむべきであったか。

七月二十三日(火) 身近なヤングたちが口を揃えて「出会いは欲しいですけどナンパなんてできません」「無視されたら立ち直れません」などと情けないことをいうものでここはひとつ100パーセント成功するナンパ術を指南するに至る。「お前ら今日から一週間水も食事も一切摂るな。そしてゲッソゲソのカッスカス状態からお姉さんお茶しませんかと懇願するんだ」と講じたところ、ややあって聡明なヤングが膝を打ち「あぁ、そうか説得力がまるで違う」と悟れば時を移さず残る者に伝播する。こうなればこちらのお役は御免、ヤングたちの「さらに震えながら杖をつくことで迫力が爆上がりするよな」「もうお茶ではなくお姉さん経口補水液しませんか?でもいいと思う」「くぼんだ目を擦りながらついに普通の自転車が電動アシスト自転車に見えて参りましたというセリフを添えてもいいかも」などという若く熱い議論を背に受けて立ち去る。

七月二十四日(水) 今秋のトムヨークソロライブ、売り切れ。これはトムヨークにとって亀田錬太郎が売り切れたと言い表すこともできる。うん、できる、できんの。

七月二十五日(木) ある男が広告代理店の面接で小テストを受けた。そのお題は「各駅停車のよいところを挙げなさい」というもので男は悩んだ挙句に「比較的席が空いている」と答えて精一杯だった。「お前だったらなんと答える?」と振られたので「準急、急行では停まらない弱小駅への慰問による人道的な心が養われる」と答えた。男は「あぁ!それだ!」と。

 

fin